映画『ゆきてかへらぬ』公式サイトNEWS

公開記念舞台挨拶 in 日本橋レポート

公開を迎えた翌日の2月22日(土)、都内3カ所の劇場にて公開記念舞台挨拶を実施いたしました。広瀬すず、木戸大聖、岡田将生、根岸吉太郎監督に加えて、主題歌「ユーモア」を書き下ろした新進気鋭のシンガーソングライターのキタニタツヤも登壇し、各地で大盛況の舞台挨拶となりました。マスコミ取材も入った、TOHOシネマズ 日本橋での舞台挨拶の模様をお伝えいたします。

映画上映後、万雷の拍手の中登壇した広瀬さんは「この映画のお話をいただいてから、かなり長い年月を経て、昨日初日を迎えることができて。そして今日も観ていただけたこと、うれしく思います」と挨拶。さらに根岸監督が「かなり長い期間をかけて、この映画と関わってきたので、今日を迎えられて夢のようです。今日は皆さんに温かく迎えていただいてありがとうございました」と呼びかけました。

広瀬さんが観客に向かって「どうでした?」と尋ねると、会場からは満足げな拍手が。その様子に笑顔を見せた広瀬さんは、「どんな風にこの映画が届くのか、受け取り方が皆さんそれぞれ違うような気がするので、早く感想を聞きたいですね」としみじみ。あらためて撮影を振り返った広瀬さんは、「当時は無我夢中でやっていたんですが、撮影は2年前なので。2年たってから観て、こんなシーンがある、こんなシーンがあったんだと、記憶をたどるような時間になってしまって客観的に観ることができなかった。だから逆に皆さんからいただいた言葉とか、伝えてくださった感想などを通じて、こういう風な映画になったんだということが多いからこそ、皆さんの言葉が聞きたいです」と語られました。

 男女3人の友情、尊敬、嫉妬が入り混じる激しく“赤い青春”を目が眩むほどの熱量で放つ本作。そこで今回は登壇者たちの“赤い春”エピソードについて伺いました。

 まずは根岸監督が、劇中で木戸さん演じる中原中也と岡田さん演じる小林秀雄が語り合うシーンに登場する「海棠の花」と回答。その理由について、「皆さん、桜かと思ったかもしれないですが、ふたりが話していたのが海棠という木の下で。これが桜の直後から咲く花なんです。1年くらい前から見学していつ咲くのかということを計算していたんですけど、一昨年はすごく早く春が来ちゃって。下見に行ったら満開なんですよ。勘弁してくれと。鎌倉のお寺とも交渉したんですけどなかなか難しくて。かなり焦ってしまった。だから赤い春というとあのシーンを思い出します」と撮影のご苦労を語られました。

 続くキタニさんは「自分は高校の時にバンドをやってて。それが青春だったんですけど、けっこうワンマンでやっていて。バンドメンバーに厳しく熱血指導してしまった結果、安定したメンバーに恵まれずに…今こうしてひとりでやっています」と返答し、会場は大笑い。さらに「中也イズムが続行したまま、赤い春が今でも続いています」と付け加えるキタニさんでした。

 さらに岡田さんが「僕も高校卒業の直前くらいに軽音学部の方々とライブをすることになって。今まで楽器に触ったこともないのに、メンバーに入ってドラムをたたくことになって。無我夢中で練習してました。メンバーには学校の先生も入っていてみんなでやるという感じで。当日まで一生懸命ドラムの練習をしていたんですが、一曲目で足がつってしまってたたけなくなったという悲しい思い出があります」と発表し会場を沸かせました。

 続いて広瀬さんは「10代の頃にはじめてドラマの主演をやらせていただいたことがあって。毎話少なくとも10ページはあるセリフというか、スピーチをしていくシーンがあって。プロデューサーさんと打ち合わせをしていたんですが、急にひとりにされてしまって。それは自分で頑張れというプロデューサーさんのメッセージだったんですけど、16歳だったので急に何で?と思って大げんかをしました。その時に赤いブレザーを着ていたので、赤といえばケンカしたという話です」と明かしました。

 そして木戸さんは「最近ゲームにハマって。オンラインゲームをしているんですけど、僕はお店でも知らない人と話すのが好きなので、ボイスチャットをオンにしてやっていたんです。たまたま小学生の子とゲームをやることになったんですが、どうやら僕のせいでゲームオーバーになってしまったみたいで…『何してるの!』とめちゃくちゃ怒られた。最近はここまで怒られることもなかったから、感情的になったというよりはごめんなさいという、赤い春でした」と苦笑し、会場のファンを笑わせてくれました。

 その後、登壇者たちには本作のメインキャラクターとなる「泰子」「中也」「小林」の名前が書かれた札が配られ、その札を使用した“お題トーク”を実施しました。2人の天才に愛される駆け出しの女優の長谷川泰子、天才と呼ばれる以前の詩人・中原中也、そして後に日本を代表する文芸評論家となる小林秀雄。まずはその中で「自分に近いタイプのキャラクターは?」というお題が出されました。

 「中也」を挙げた広瀬さんを除き、揃って「小林」の札を上げる男性陣4名。3人ともかなり個性的なキャラクターであるがゆえに、なかなか選ぶというのも難しく、消去法で「小林」を選んだと口々に語られたましたが、根岸監督もその理由について「監督と泰子にはついていけないところがあって。ふたりを除くと小林になるかなと。僕は東京生まれなので、小林は東京人らしいなと。泰子と中也は地方から出ている人だからちょっと雰囲気が違う。そういう意味で小林です」と追加の理由を解説されました。
一方で、一人だけ「中也」を選んだ広瀬さんは、「この3人は難しい!」と悩ましい様子。しかし「文学的表現はわからないけれど、中也とは動物的本能が自分と近しいなと思って。楽しいことにちゃんとウキウキしている。本能的に感情があって、表現の仕方も含めて、小林よりは中也かなという理由です」丁寧に説明されました。小林を演じた岡田さんも「演じていたからこそ、向き合い方は共通したものがあるかなと。完璧に似ているわけではないのですが、俯瞰的に見るところなどは似ているかなと思います」と振り返っていました。

 続くお題は「青春時代を一緒に過ごしたいキャラクターは?」。それに対して「3人とも嫌だなぁ」とポツリと呟き会場を笑わせる広瀬さんでしたが、選んだのはご自身が演じた「泰子」。その理由について「友だちの友だちの友だちくらいの距離感なら。うわさは聞くという感じで、なかなか出会えない刺激をもらえそうな存在になるかも」と話されました。同じく「泰子」を挙げたキタニさんは、「絶対に嫌ですけど、逆にこの子とうまくやれたら成長できそう。青春時代につるんでいたら、自分が大きくなれる気がします」とコメント。そしてもうひとり「泰子」を選んだ岡田さんは「天才ふたりに囲まれている彼女には、何か渦巻いているものがあると思うんですが、ここに天才じゃないわたしが入れば、三角関係でなくて、四角関係にすれば泰子さんを支えられるんじゃないかなと。話を聞くことくらいはできるかなと思います」と語ると、広瀬さんも「やさしいね」と感心していました。
 一方、「中也」を挙げたのは中也を演じた木戸さん。「動物的な天才さは、青春時代の若さゆえに許されるようなところがあると思う。中也みたいな人と青春時代を過ごしたら、いろんなことに引っ張られて無我夢中になれる青春時代もあるのかなと。その経験が失敗だったとしても、大人になってから生きてくるのかなと思う」とその理由を説明。同じく「中也」を挙げた根岸監督も「僕の若い頃はやけに自分に自信を持っている仲間というか、映画人がまわりにいて。そういう人間とある時期一緒に過ごせたのが良かったなと思うので、そういう意味で中也です」としみじみ語られました。

 イベントも終盤を迎え、根岸監督が「映画はしばらく前に完成していたんですけど、映画の完成というのはつくり手の僕たちだけでなく、観客の皆さんに観ていただいて映画が完成すると思っていますし、今日はそういった実感があります。皆さまと一緒にこの映画をスタートすることができてうれしく思います」とメッセージを送り、広瀬さんも「大正から昭和初期が舞台の作品が皆さまにどう映るのかなと不安もありますが、楽しみにもしていました。今日は多くの世代の方に来ていただいて。この作品はこういう風に届くんだなと思ったらワクワクしております。ぜひ面白かったと広めていただけたら」と会場に呼びかけ、和やかに舞台挨拶の幕が下りました。