監督 根岸吉太郎
大学で学生に映画を教えたり共に学んだりしているうちに、時があっという間に過ぎ去り16年ぶりの長編映画となりました。『ゆきてかへらぬ』は多くの監督や演出家が映画化したいと望んでいた知る人ぞ知る田中陽造さんの珠玉のシナリオです。これを託され5年の準備期間を経て素晴らしいキャストに恵まれ完成しました。
今回のすずさんは奥深いところで役を捉え、まるで泰子という主人公に憑依したかのようです。誰も見たことのない泰子の「広瀬すず」がここにいます。
大正から昭和へ移る時代を舞台に、ひとりの女とふたりの男の、奇妙な三角関係と真摯で壮絶な青春を描いた作品です。ぜひ、今の時代に青春を送る若者たちに観ていただきたいです。
キャストキャスト
長谷川泰子 役 広瀬すず
今回演じた長谷川泰子は、大正というモダンな時代を自由にというか、必死というのか、無謀に駆け抜けた女性でした。
本当に体力のいる役でした。
根岸監督はこの作品が16年ぶりの長編映画と聞いておりましたが、それを感じさせない程、現場では監督の体力が一番すごかったですね。根岸監督の映画づくりというものを、この目で見て、体感して、とても贅沢でした。
是非、ご期待ください。
中原中也 役 木戸大聖
詩人・中原中也という大役をいただき、根岸監督の演出を受けることができたのは、本当に貴重な経験で、今後の俳優人生に活かせることを沢山教わりました。監督は3人の関係性を「自己中のぶつかり合い」と仰っていましたが、すずちゃんと将生さんとの芝居の日々は、毎日が刺激的で楽しかったです。おふたりのことは、ずっと映画やドラマで観てきたので、最初は緊張しましたが、最終的には中也として2人にぶつかって行くことができたのかなと思います。ぜひ注目してください。
小林秀雄 役 岡田将生
約40年前に書かれたこの脚本に、一目惚れしました。そして今しかないという奇跡的なタイミングで、小林秀雄を演じる機会をもらうことができました。もう5年10年早かったら、演じられなかった役だと思いますし、なにより憧れの根岸監督と、ようやくお仕事することができて、心が踊りました。広瀬さんの泰子はミステリアスで魅力的で、木戸くんは本当に中原中也がそこにいるようでした。そんなふたりを見ていると、次第に小林自身の感情と重なっていきました。本当に素晴らしい作品です。どうぞ楽しみにしていてください。
3人の壮絶な愛と青春の物語を彩る、重要な登場人物を演じた総勢7名の登場人物
田中俊介
トータス松本
瀧内公美
草刈民代
カトウシンスケ
藤間爽子
柄本佑
中原中也(木戸大聖)の数少ない友人のひとりで詩人・画家としても活躍した富永太郎役に、『ミッドナイトスワン』や「鎌倉殿の13人」、『十一人の賊軍』など話題作への出演が絶えない田中俊介。長谷川泰子(広瀬すず)の辛い過去を知る謎の男・鷹野叔役に、ミュージシャンでウルフルズのボーカリスト・トータス松本。泰子の母・長谷川イシ役に、『火口のふたり』や『由宇子の天秤』で様々な映画賞に輝いた瀧内公美。泰子が出入りする撮影所のスター女優役に、『Shall we ダンス?』の草刈民代。小林秀雄(岡田将生)の友人で大学に勤める辰野教授役に、『ケンとカズ』や『福田村事件』など様々な作品で存在感を放つバイプレイヤー・カトウシンスケ。のちに中也の妻となる女性・中原孝子役に、日本舞踊家でありながら俳優としても活躍し、主演ドラマ「つづ井さん」が絶賛放送中の藤間爽子。泰子が東京で出会う勤め人役を、映像作品「近代能楽集ノ内『葵上』」以来の待望の根岸組への参加を果たした柄本佑が演じる。
総勢7名の豪華実力派キャストが演じる一癖も二癖もある登場人物たちが、泰子、中也、小林の3人の人生に関わり、二度と戻ることはできない赤裸々な愛と青春の物語を彩っていく。果たしてこの7人がどのように物語を紡ぎ、3人はどんな結末を迎えるのか――
根岸吉太郎監督のコメント
『ゆきてかへらぬ』は中原中也、長谷川泰子、小林秀雄の三人の静かに燃えるトライアングルの世界です。その三角形に手を浸すことも足を踏み入れることも、共演者としては冷静な勇気がいるでしょう。今回共演してくれた皆さんは、卓越な演技と近づいてはいけない距離感を見事に測りながら映画を支えてくれました。そしてその場にそれぞれの強い個性をしっかり残してくれたことに驚き感謝しています。