ゆきてかへらぬ

純情なのか、純愛なのか 3つの愛の、行き着くそこ。
まだ何者でもない若者たちの二度と戻れない、愛と青い春を描く——
広瀬すず 木戸大聖 岡田将生 監督:根岸吉太郎 脚本:田中陽造 製作幹事:木下グループ 制作プロダクション:ギークピクチュアズ/ギークサイト  配給:キノフィルムズ © 2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会
2025年2月21日公開

トレーラー

イントロダクション

出逢ってしまった。

駆け出しの女優、長谷川泰子は、不世出の天才詩人、中原中也に出逢ってしまった。中也に出逢うということは、後に日本を代表することになる文芸評論家、小林秀雄に出逢ってしまうことだった。

監督、根岸吉太郎は、脚本家、田中陽造の台本に出逢ってしまった。大正時代、才能あふれる3人の若者たちの恋愛と青春、あるいはそのいずれでもない崇高ななにか。正三角形ではなく二等辺三角形。ありきたりのトライアングルではない、唯一無二の人間関係がそこには記されていた。『ツィゴイネルワイゼン』『セーラー服と機関銃』など日本映画史に残る脚本家のその作は、多くの監督たちが熱望しながら長い間実現することができなかった秘宝。その扉を、『遠雷』『ウホッホ探検隊』『雪に願うこと』の名匠がついに開けた。根岸と田中が組んだ『ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜』以来、実に16年ぶり。根岸にとっても16年ぶりの新作となった。

広瀬すずは、根岸吉太郎と田中陽造に出逢ってしまった。現代日本映画に輝く天才女優が、1970年代から疾走してきた日本映画のトップランナーたちと邂逅。そうして生まれたのは、生粋のアーティストふたりに愛されながらも、自身の夢と格闘しつづけた、真っさらで潔い女性の肖像。女性男性の枠を超え互いをリスペクトしているからこそ生まれもする軋轢と混乱。そのありようを体現する広瀬の、かつて誰も見たことのなかった生命のとめどなさを前に、誰もがこうつぶやくだろう。

田中陽造、幻の脚本が幻のままだったのは、永らく田中が描く中原中也に相応しい俳優が登場しなかったことが理由の一つと言われている。そこに、木戸大聖が現れた。Netflix「First Love 初恋」で佐藤健の若き日の姿を演じ鮮烈な印象を残すなど、今、旬の注目株。初々しく瑞々しい木戸の求心力は、映画·ドラマで描かれてきた畢生の天才詩人のイメージを大胆に塗り替えた。そして、泰子と中也の関係性をある意味、唯一無二のものにしたとも言えるキーパーソン、小林秀雄に名優、岡田将生が扮する。ある時は冷静に、ある時は情熱のままに、中也に惹かれ、泰子にも惹かれる小林の姿は、21世紀を生きるわたしたちにも訴求する現代性が豊かに波打っており、片時も目が離せなくなる。そう、長谷川泰子が中原中也と小林秀雄と出逢ってしまったように、『ゆきてかへらぬ』という幻は、広瀬すず、木戸大聖、岡田将生と遭遇、ついにわたしたちの前に、かつて転生することになった。

『ゆきてかえらぬ』は、その名があらわすとおり、後戻りすることのない3人の生き方を追いかける。傷だらけになりながらも、進んでいく。いや、傷だらけだからこそ、生きている。こんな人々がかつていた、ではなく。わたしたちもまた、こんなふうに愛し愛され傷つき生き進んでいる。

ラストシーンのあと、久しぶりにそんな感慨をもたらす映画が、2025年2月に公開される。

ストーリー

京都。

まだ目の出ない女優、長谷川泰子は、まだ学生だった中原中也と出逢った。20歳の泰子と17歳の中也。どこか虚勢を張るふたりは、互いに惹かれ、一緒に暮らしはじめる。価値観は違う。けれども、相手を尊重できる気っ風のよさが共通していた。

東京。

泰子と中也が引っ越した家を、小林秀雄がふいに訪れる。中也の詩人としての才能を誰よりも知る男。そして、中也も評論の達人である小林に一目置かれることを誇りに思っていた。男たちの仲睦まじい様子を目の当たりにして、泰子は複雑な気持ちになる。才気あふれるクリエイターたちにどこか置いてけぼりにされたようなさみしさ。

しかし、泰子と出逢ってしまった小林もまた彼女の魅力に気づく。本物を求める評論家は新進女優にも本物を見出した。そうして、複雑でシンプルな関係がはじまる。重ならないベクトル、刹那のすれ違い。ひとりの女が、ふたりの男に愛されること。それはアーティストたちの青春でもあった。

キャスト

スタッフ

  • 根岸吉太郎

    監督

    1950年8月24日生まれ、東京都出身。
    早稲田大学第一文学部演劇学科修了後、日活に入社。78年『オリオンの殺意より、情事の方程式』で初監督。81年『遠雷』でブルーリボン賞監督賞、芸術祭選奨新人賞を受賞し、05年『雪に願うこと』で芸術選奨文部科学大臣賞、第18回東京国際映画祭の4部門受賞をはじめ、多くの映画賞を獲得する。09年、映画『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~』では、モントリオール世界映画祭 最優秀監督賞受賞。10年には紫綬褒章を受章。主な監督作品に『狂った果実』(81)、『探偵物語』(83)、『ひとひらの雪』(85)、『ウホッホ探検隊』(86)、『永遠の1/2』(87)、『絆-きずな-』(98)、『透光の樹』(04)、『サイドカーに犬』(07)などがある。

  • 田中陽造

    脚本

    1939年東京・日本橋生まれ。
    鈴木清順、大和屋竺らと脚本家グループ「具流八郎」で活動、『殺しの烙印』(67)でデビュー。70年代から、『花と蛇』『おんなの細道 濡れた海峡』(80)など、日活ロマンポルノの中心的な脚本家として活躍。その他、鈴木清順監督の大正浪漫三部作、『ツィゴイネルワイゼン』(80)、『陽炎座』(81)、『夢二』(91)、曽根中生監督『嗚呼!! 花の応援団』シリーズ(76~77)、相米慎二監督『セーラー服と機関銃』(81)、『魚影の群れ』(83)、『夏の庭The Friends』(85)、渡邊孝好監督『居酒屋ゆうれい』(94)、杉田成道監督『最後の忠臣蔵』(10)など多数の脚本を手がける。根岸吉太郎監督とは『透光の樹』(04)、『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』(09/第64回毎日映画コンクール脚本賞を受賞)以来のタッグとなる。

ミュージック

キタニタツヤ アーティスト写真

主題歌「ユーモア」

作詞・作曲:Tatsuya Kitani
編曲:トオミヨウ
(MASTERSIX FOUNDATION/Sony Music Labels Inc.)

キタニタツヤ

2014年頃からネット上に楽曲を投稿し始める。同時期に、他アーティストに楽曲を提供する作家としてのキャリアもスタート。
2020年頃から「キタニタツヤ」名義での活動を加速させ、2023年7月、TVアニメ『呪術廻戦』「懐玉・玉折」オープニングテーマ「青のすみか」をリリース、第74回紅白歌合戦に出場。
2024年5月、最初にインターネットに音楽を投稿してからちょうど10年の節目に「キタニタツヤ 10th Anniversary Live 彼は天井から見ている」を武道館にて開催、チケットは発売当日にソールドアウトとなるプレミア公演となった。同年、中島健人との特別ユニット"GEMN"としてTVアニメ「【推しの子】」のオープニング主題歌を担当。
自身名義の活動以外にも、WEST., 星街すいせい, SUPER EIGHTなど、アーティストに楽曲を提供するなど、ジャンルを越境した活躍を続けている。